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これからの林業は、馬で木材を搬出する「馬搬」だ!循環型・自給型社会を目指すために。

 

「馬搬」ーーー現代社会に生きる人たちにとっては、あまり聞き慣れない言葉だと思います。林業で切断した木材を、馬で搬出するという目的で使われています。

現在自転車日本一周をしながら、長野県高遠町に住む馬と共に暮らす夫婦のもとで居候しているんですが、「長野県中川村で馬搬をやるよ!」と声をかけて貰ったので喜んで付いていきました。

かつては当たり前に使われていた、古く新しい技術。林業のことはほとんど無知だけれど、馬の可能性を聞いたとき「これは!」と思いました。馬搬、これからの林業を担っていく可能性あるよ!

 

 馬搬は森を汚さない。

 

長野県は中川村。「日本一で最も美しい村」に選出されたということで有名な、山深い場所。

今回は林業関係の講習の一部を担うことになったらしく、参加者の前で馬搬を披露するということで僕もついていってみました。

以前馬耕の見学・体験には行ったことがあるけれど、馬搬見学・体験は初めて!楽しみだなー。

 

 

こんな自然が美しい場所で馬搬を行うことになりました。気持ちいいね。

あとで林業関係の方に聞いた話なんですが、重機で木材を搬出をする場合、ある程度距離が遠いと道を作って機械が通れるようにしないといけないみたいなんですね。

一方、馬を使う場合は当然ながらそんなものはいりません。つまり、わざわざ手間をかけて森を破壊する必要がありません。素晴らしいね。

 

馬搬の歴史について、ここで少し紹介しておきます。

主に馬の有名な産地である岩手県遠野市で行われており、昔から続く馬搬が一時的に途絶えてかけてしまったものの、循環型社会・自給自足生活に興味を持つ若い人たちが、技術を受け継いでいっているみたいです。

現在でも林業で馬を活用していることを知っている人はどのくらいいるでしょうか。 馬は、林業機械が発達していなかった時代には、人力以外の重要な労働力となっており、岩手県遠野市においても昭和の中頃までは40人以上の馬方がチームを組んで搬出を行っていました。しかし、林業の機械化等にり、伝承が難しくなっており、現在、日本では約5名の人が生業として継承しています。

出典:馬力舎

 

機械が登場する前の古い技術なので、知っている人が少なくてもおかしくはない。

でも、最近の自然派・オーガニックブームから「もっと循環型の社会を!」と発信する若者が少しずつ増えていて、馬で畑を耕す馬耕と同様、少しずつ見なおされていっているみたいです。

有名な『里山資本主義』という本でも取り上げられているそう。

 

 

今回は比較的小型馬である、居候先で飼育されているビンゴを使って馬搬を行っていきます。

機械じゃないので、到着してもすぐに動けるわけではありません。なので、道具の準備をしながら早速ウォーミングアップタイム。

 

 

馬搬・・・とは関係ないけど、どうして馬ってこれほどまでに可愛いのだろうかね。

元々興味があったわけではなかったんだけど、馬とずっと接しているうちに好きになってしまった。不思議である。可愛い・・・!

 

 

道具の名前は忘れてしまったけど、馬搬では鈎状になったこの道具を木に差し込んで、木材を引っ張ります。

力を入れれば入れるだけ食い込むという優れた道具。

 

 

こちらは、「トビ」というツルハシ状の道具。

木材を引っ張る目的に使えるほか、上述したアイテムを木に打ち込むために「トンカチ」の機能も備えてあります。

 

 

木材を牽引するための一連の道具を取り付けて、模擬演習開始!

本番前に軽く練習をしておきます。

 

 

まずはこちらの小さい丸太を運びましたが、小型馬のビンゴでも軽々と運んでいきました。さすが!

 

 

少し大きめの丸太も、楽々クリア!

試しに自分でも運んでみようとしたけども、非力な自分にはとてもじゃないけど引っ張れそうにありませんでした。さすが馬だ・・・。

単純な力量でいえば機械に及ばないのは当たり前だけれど、生物がこれだけの重量を楽々と運べるってすごいことだよね、と思います。

 

徐々に見直されつつある馬搬

 

前述したとおり、今回は林業関係の方・興味のある方向けのワークショップで馬搬を行う予定だったので、参加者の皆さんの前でも披露します。

頑張れ、ビンゴ!

 

 

かつては見放された「馬搬」も、最近は見直されつつあるので、少しずつだけれど興味のある人が増えていっているみたいです。

真剣に見つめる参加者の方々。

 

 

今回はこちらの大きな丸太群を運び出し、乾燥させる場所まで引っ張るという作業を行います。

馬搬の直前に人力で切り出された生木なので、ある程度の大きさに切断してあるといっても500kgほどの重量があるそうです。

当然人間1人では引っ張ることもできません。

 

 

さすがにこれほどの木材は簡単にはいかないようだけど、それでもなんとか引っ張っていきます。すごい!

ちなみにですが、木材を引っ張ることによって表層の土が削られ、キノコなんかが生えやすくなるそう。

簡単にいうと、畑を耕したようになると言うこと。なんでも循環しているんですな。

 

 

あまりに重量のある丸太を運び出す場合、馬の方が負荷に耐えられなくなってしまうので、人力で「コロ」と呼ばれる小さい丸太を下に差し込んでいきます。

コロを設置すれば、丸太の上を転がって摩擦抵抗が相当軽減されるってことですね。

場合によってはこんな裏ワザを使用することも出来ます。

 

 

こんな大きい丸太も、「コロ」さえあれば比較的簡単に引っ張ることが出来るようで、次々に搬出していきます。

これなら、ある程度作業が捗るね。やるじゃん!

 

 

最後に細かい木材も運びだして、今回の講習は終了。ビンゴ、お疲れ様!

 

これからの林業は馬搬だ!

今回は、林業や馬搬のことをほとんど知らない若者が、実際に馬搬や林業経験者の話を聞きながら体験することまでをやってみました。

結論から言うと、これから林業の選択肢の1つとして、「馬搬」が選択される余地は大いにあるな!と思いました。

人からの受け売りな部分は相当数ありますが、簡単に述べてみます。

 

まず第一に、定番ですが自然回帰・循環型社会生活のムーブメントが起きていること。

林業関係者の中でも「馬搬という選択肢はありなのでは?」という人も出てきているようで、徐々にですが注目されているよう。馬耕も同様ですが、少しずつ担い手も増えているようです。

経済価値に晒されない自給自足生活なんかでは、大いに取り入れられても何ら違和感がありませんよね。

 

第二に、ニッチな需要にマッチするのではないか、ということ。

話によると、重機の値段も馬鹿にならないし、林業を行うためには森林を破壊して道路を作るしかないそう。

また小規模な伐採で一々重機を使用するのは大変なので、大規模に効率的に搬出するには重機を、小規模または重機で取りきれないところを馬搬で。という選択肢は相当アリなんじゃないかな。

 

機械と比較すると、当然生産量は落ちます。でもそれぞれでニーズ・需要も異なるだろうし、馬と引き手のリース等が出来れば経済的な負担も下がって利用しやすくなります。

最後にですが、今回使用した馬は比較的「小型馬」だということを忘れてはいけません。

400kg級みたいですが、大型な種になると1t超にもなるそうです。どんだけデカイんだ・・・。

 

 

事前に半年ほど乾燥させ、適度な大きさに切断し、また斜面を滑らせて運ぶ必要はあるそうだけど、巨大な馬なら一度にこの木を丸々一本搬出できるそうです。

これぞ、「馬搬」の可能性!ぜひ林業関係者の方の意見をお待ちしています。

それでは!